『忘れないで、上手に忘れた』
モノローグ
「人生第2章も一緒に生きよう」
もちろんそうしたいけど第2章にリアルWUGちゃんたちは今の所いないのである。
"心に刻んで一生忘れないようにしよう"
ライブでこのMCを聞いた時、そう思うのは簡単だが実際にそうできるかの不安も正直あった。
オタクなんて薄情なもんだ。
どうせすぐ次のコンテンツを見つける。
自分だってプリパラにすっかりハマりこみTLに感想と狂気を垂れ流す毎日だ。
「本当に刻まれていて
本当に生きているのかなぁ」
そんな確証をどこかで求めていたんだ。
旅路にて
アニメロサマーライブを直前に控えた8月下旬。
うざったいくらいの日差しに辟易しながらも秋の気配を感じ少々の寂しさも入り混じるそんな季節。
少しでも楽に移動するため車通りも少なく、気温も比較的涼しい夜の間に距離を稼ごうという事で23時に出発した。
深夜3時頃。
箱根を目前にした大磯付近。
ここに来るまでに既に50km近く漕いでいるし、なんなら徹夜での巡行だ。
割と体力には自信がある方だが慣れないロードの姿勢で肩や腰が悲鳴を上げている。
その影響もあってかジワジワと体力を削られていく。
ポケモンでいう所の「どく」状態みたいなイメージだ。
そんな限界状態の中ふと思う。
「ああ、WUGの曲を聴きたい」
聖地仙台での魂のぶつけ合い。
SSAでの有終の美。
至れり尽くせり、文句のつけようがない終末いや週末を見せつけられたため栞を挟みWUGという本のページをきっぱりと閉じた。
いつまでも思慕したくなる気持ちはよくわかるが割ときっぱりとした性格なので、自分の薄情さに後ろ髪を引かれつつもページを閉じて心の本棚にしまったのだ。
それが美徳だとすら思っていた。
あんなにも綺麗に終わった、その美しさは蒸し返すことなくそのまま心に刻んでおきたかった。
『忘れないで、でも上手に忘れて』
これが"上手な忘れ方"だと思っていた。
体力、精神的にも疲労していたのでついついそんな硬い考えが緩んだのだろう。
夜の街に煌々と輝くコンビニの灯りを背にスマホをタップする。
お気に入りのイヤホンを耳に突っ込み、大好きなWake Up,Girlsのプレイリストを再生した。
再びリズムが飛び跳ねた。
走馬灯のようにめちゃくちゃに楽しかったライブたちが脳内で蘇ったのだ。
Blu-rayディスクを直接脳内にブッ込んだかのように鮮明に流れる。
「俺の頭はいつの間に4Kに対応したんだ?」
そんなアホな感想が出るくらい鮮明に、刻銘に想い出たちが一気に溢れ出る。
名曲の数々
個性あふれる歌声
美しいフォーメーション
あたたかな掛け合い
等身大のMC
「ああ、きちん僕の中でWake Up,Girls!は生きてるんだなぁ。」
と、ふとした瞬間に再確認した。
そんな話。
これからも上手に忘れながら、
ふとした瞬間に心の本棚に手を当ててページを開いてみようと思う。
そこには終わらないDreamerたちが待っているはずだから。